| 図で見る環境白書財団法人 日本環境協会 |
大気汚染の現状と対策大気汚染とは大気汚染とは,大気中にいろいろな汚染物質があって,そのままでは人の健康や生活環境によくない影響が生じてくるとみられるような状態をいいます。 このような状態には,火山の噴火によるばい煙の発生など,自然活動に起因するものも含まれますが,今日の汚染は,その主要部分が工場,事業場の活動など人為的に発生したものによっていますから,法律では,これらを「大気汚染」としてとりあげ,規制を行っています。 代表的な大気汚染物質としては,(1)硫黄酸化物(二酸化硫黄,三酸化硫黄),(2)窒素酸化物(一酸化窒素,二酸化窒素),(3)一酸化炭素,(4)浮遊粒子状物質(粉じん,ばいじん),(5)光化学オキシダント(オゾン,パーオキシアシルナイトレート(PAN)など)があげられます。 大気汚染の影響人は大量の空気を呼吸していますが,この空気が汚れていると,汚染物質は呼吸器へ直接影響し,また,呼吸器を通じて体内にとりこまれ,それぞれ汚染物質の性質に応じて,体内の細胞,組織,器官に異なった影響を与えます。 大気汚染物質のうち,硫黄酸化物,粉じんなどの人体に対する影響としては,慢性気管支炎,ぜん息性気管支炎,肺気しゅ,これらの続発症などがあげられます。 光化学オキシダントは,眼のチカチカや,のどの痛みなどの症状が中心となっています。 また,一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと結びついて体内の酸素交換を妨げます。粉じん中には発がん性があるといわれるベンツピレンや有害な重金属などが含まれることもあります。 植物に対する影響としては,農作物の生育障害,収穫量の減少,品質の低下などがあげられます。 ●大気汚染に係る環境基準 ![]() 大気汚染による被害の例大気汚染によって生じた被害の例としては,ロンドン(イギリス),ロサンゼルス(アメリカ),ミューズ(ベルギー),四日市(三重県)などの事例があります。 ロンドンでは,冬,暖房のために石炭を燃やしたために発生した粉じんと二酸化硫黄(亜硫酸ガス)によるスモッグが発生していました。特に,1952年12月5日からの5日間は無風状態で逆転層が発生していたため,汚染状態が続き,以後3週間ほどの間に平時よりも4,000人も多い死亡者がでました。 また,アメリカ合衆国の西海岸にあるロサンゼルスでは,1940年代より,晴れた暑い日に,白いもやがかかって遠くが見通せなくなる状態が生じ,目やのどに対する刺激や植物の被害,ゴムのひび割れなどの影響が見られました。これは光化学スモッグと呼ばれます。 日本での代表的な汚染の例は,昭和30年代後半に四日市で発生した呼吸器系疾患の多発です。これは,主に隣接する火力発電所や石油コンビナートから多量に排出された硫黄酸化物などの悪い影響によるものでした。 この例にみられるように,日本では昭和40年代前後に著しい大気汚染を経験しました。その結果現在では公害健康被害補償法により41の地域が指定されており,大気汚染系疾病の認定患者数は,54年12月末で76,340人となっています。 今後は,二度とこのような健康被害をくり返さないよう,未然防止に万全を期していかなければなりません。また,1日も早く,このような補償法が必要とされない日がくるようにしなければなりません。 |
●主な大気汚染因子の推移![]() (注)継続してデータのある測定局における濃度の年平均値の単純平均値 |
自動車排出ガス規制効果の経緯(新型車)(NOx排出量の平均値)![]() これらの規制に対応して,工場・事業場では, 1)燃料の転換や低硫黄化 2)重油の脱硫(燃料から硫黄分を除去する方法) 3)燃焼技術の改善(低NOx燃焼技術など) 4)排煙脱硫装置や集じん装置の取り付けなどの様々な防止対策がとられています。また,自動車についても,規制基準に適合するようなエンジンの改良が進められ,特に乗用車については,世界で最も厳しいといわれた昭和53年度規制を満足する自動車の開発に,総てのメーカーが成功しました。 |
水質汚濁の現状公共用水域の水質汚濁の状況は,最近では全般的に改善の傾向を示しており,特にかつて問題とされたカドミウムやシアンなどの有害物質(健康項目)による汚濁は,全国的にほぼ問題のない状況にまでなってきています。 しかし,様々な利水上の障害をもたらす有機汚濁(生活環境項目)については,一部の湖沼や内海,内湾,都市内の河川などで水質改善がなかなか進まず,なお高い汚濁の状況にあります。有機汚濁の代表的な指標であるBOD,CODについて各水域が環境基準を達成しているかどうかをみると,環境基準を達成している水域の環境基準類型指定水域の総数に対する割合は河川では60%,湖沼では38%,海域では76%が達成しているにすぎないという状況です。このような水質汚濁の現状をふまえ,生活環境項目については一般に汚濁発生源が多岐にわたることを考慮すると,環境基準を早急に達成することは困難であり,今後更に一層の水質改善の努力を進めていくことが必要であるということができます。 特に今後の水質保全対策を進めていく上で問題となるのは,瀬戸内海や東京湾,伊勢湾などのいわゆる広域的な閉鎖性水域です。これらの水域では,外洋との水の交換が悪く,汚濁物質が滞留しやすいという条件がある一方,後背地にある大都市や大工業地帯から大量の生活排水や産業排水が流入しているため,水質汚濁が進行し,環境基準の達成は非常に困難な状況にあります。 ![]() さらに,これら広域的閉鎖性水域をはじめとして,湖沼,内海,内湾などの閉鎖性水域においては,水交換が悪いために,リン,窒素などの栄養塩類の流入によって水中生物が急激に増殖し,水質が累進的に悪化するいわゆる富栄養化の問題が顕著になっています。富栄養化は,アオコや赤潮などを発生させ,水道や漁業などに障害をもたらしており,これら水域の水質汚濁の大きな要因ともなっています。 また,水質汚濁の場合,特に過去の汚染によって汚濁物質がたい積している水域では,これを除去しない限り,汚染が長期間続くといういわゆる蓄積性汚染の問題があります。水銀,PCBなどの有害物質が含まれるヘドロについては,全国的に除去事業が進められていますが,そのためには二次汚染の防止のための安全な工法と多額の費用が必要とされます。また,鉱山では,閉山後も坑内水などが流出し続け,それに有害物質が含まれることが多いため,長期間の排水処理対策が必要になっています。 ●健康項目(有害物質)に係る環境基準不適合率 (備考)環境庁調べ ![]() ●生活環境項目に係る環境基準達成率 ![]() (備考)環境庁調べ ●水質汚濁の経年変化 ![]() (備考)建設省及び都道府県庁調べ ●主要河川の水質汚濁状況 ![]() (備考) 1.環境庁調べ(54年) 2.BOD値である。単位:ppm 3.( )内は53年調べ ●主要湖沼・内湾の水質汚濁状況 ![]() (備考) 1.環境庁調べ(54年) 2.COD値である。単位:ppm 3.( )内は53年調べ |